紙製パッケージはどのようにポジショニングしていくのか
─PACK EXPO 2019から見えたこと─

今回は、容器包装における「紙のポジショニング」について考えをまとめてみました。

今回のコラムを書いているのはサンフランシスコから日本へ向かう機上。そして今飲んでいる水はサンフランシスコ空港で“汲んだ”水。ご存知の方もいらっしゃるかと思うが、今年の8月20日から同空港ではプラスチックボトルの水は販売禁止となっている※1

各種フレーバーで勝負する製品(コーラやオレンジジュース、お茶など)は従来通りのプラスチックボトルで構わないが、清涼飲料水のうち水だけは禁止されている。販売されているのは「PATHWATER」という缶製品が圧倒的メインで“100% RECYCLABLE ALUMINUM BOTTLE”と印字されている。大容量の740mlで約4$。“水入りマイボトル“を購入したと考えればリーズナブルにも思えてくる。

そして、この空港には、100mに1箇所くらいの割合(著者のイメージ)で水飲み場があり、そこに給水スタンドが併設されており、「PATHWATER」はジャストサイズで収まる。エコノミークラス症候群対策としても、積極的に大量の水を持参することが奨励されているようで、多くの人がマイボトルや空になった「PATHWATER」ボトルに給水していた。広口で洗いやすくリユースに向いた缶容器は、リサイクラブル性も含めワンウェイプラスチックのリデュースにつながり、消費者の支持を得られやすいものと感じた。

サンフランシスコ空港の給水ステーション

サンフランシスコ空港の給水ステーション

水はガラス瓶製が少しあるが、PATHWATERのボトルが売り場のほとんどを占める。プラスチックボトルの水は販売禁止

水はガラス瓶製が少しあるが、PATHWATERのボトルが売り場のほとんどを占める。プラスチックボトルの水は販売禁止

さて、訪米の目的はラスベガスで開催された「PACK EXPO2019※2」の視察。今年のテーマは「POWERING INNOVATION」で、パッケージの変化の軸足を各社がどのように考えているかを探索した。

「PACK EXPO」は、2015、2017、2018年に続き定点観察している。基本的に例年、各社の旬の技術を発表する機会としての位置づけがメインで、今回のようなテーマは各社のお得意のところ。目立ったイノベーションとしては「AI」の流れに乗った「Connecting」関連技術が機械、装置メーカーから多く発表されていた。

紙面の関係で詳細は省くが、ある充填機械メーカーは、工程管理を後工程に申し送り工程を繋げるディスプレーに設備のマニュアルと教育用のデータを組み込み、トラブルにも即座に対応できるモニタリングシステムを発表。また、ある飲料容器メーカーからは、パッケージにつけたQRコードから物流-流通を経て家庭の冷蔵庫に収まるまでの動きをトレースできる構想が発表された。

従来、一般的なトレースは、消費者クレームから製造、原材料まで遡ることを主眼としてきた。今回の発表は、消費者に届けるまでをトレースし、IoT冷蔵庫を通じて消費者に消費期限を知らせるなどという“コンシューマーとの新たなエンゲージメント”を想起させるコンセプトで、AIやロボティクスの進化もあり普及していく日は近いと感じた。この2つの事例から、機械が繋がるというより“結果として人が繋がっていく”ことが「Connecting」の思想となっていくものと予感した。

また米国で開催されるこの展示会は、日本や欧州のパッケージ展に比べ、昨年までは「サステナビリティ」への感度や露出が低い傾向があった。今回、「サステナビリティ」をテーマにした2つのセミナーを聴講したが、どちらも超満員。1つ目のセミナー「Sustainability and the Circular Economy※3」は会場に入れずガラス窓越しにスライド写真だけは確保した。

「Sustainability and the Circular Economy」会場風景

「Sustainability and the Circular Economy」会場風景

「Sustainability and the Circular Economy」プレゼンの1カット

「Sustainability and the Circular Economy」プレゼンの1カット

2つ目のセミナー「Global Packaging Challenges to Achieve Sustainability※4」は早めに席を確保したが、あっという間に満員立ち見のセッションとなった。サプライチェーンの変容の中で、パッケージをめぐる各種社会課題(プラスチックごみ問題、フードロス、長寿化、流通の変化等)を紹介し、その対応には、最終的に“消費者行動の変化”に行き着く必要があり、啓蒙・教育が必要となっていくとまとめていた。

「Global Packaging Challenges to Achieve Sustainability」プレゼンの1カット

「Global Packaging Challenges to Achieve Sustainability」プレゼンの1カット

「Global Packaging Challenges to Achieve Sustainability」プレゼンの1カット

「Global Packaging Challenges to Achieve Sustainability」プレゼンの1カット

先ほど書いたように昨年までのPACK EXPOではブース内メッセージに「Sustainability」のようなフレーズはあまり見られなかったが、今年は各企業のブースで環境推しのキーワードとして、特に紙製パッケージやバイオプラスチック系の製品分野でその表記が増えていた。具体的な事例をいろいろご紹介したいが、本コラムでの記載はこれまでとしたい。

まとめとして、著者なりに各社の展示から感じたパッケージの方向性は、プラスチックのリデュースに導く「バイオマス化」と、サーキュラーエコノミーでのリサイクラブルに導く「モノマテリアル化」という2つの流れ。この2つを同じマップ上で表現し、紙製パッケージをポジショニングすると下図のようになる。

紙製パッケージは仕様・構成次第で限りなくこの2軸を満たす有効な素材と成り得る。また紙とプラスチックの積層のようなマルチマテリアルについても、イージーセパレーション設計で簡単に分離できるものは事実上のモノマテリアルとして機能していく。実際、この手の製品は展示会での露出が増えてきた。また、機能性を優先し包材設計上、易分離できないものは紙を使って高バイオマス度化することで、カーボンニュートラル性を活かした熱回収に振り向けるという視点も、当面のパッケージの選択肢のひとつとなるのではと思う。紙とプラスチックのマルチマテリアルについては、現在それを回収しリサイクルする仕組みが無いが、ステークホルダーと共同で検討・構築していくことが紙パルプ業界として重要なテーマとなっていくものと思料する。みなさんと一緒に、できることから進めていきたい。

紙製パッケージのポジショニング

紙製パッケージのポジショニング

パッケージング・コミュニケーションセンター長 金子 知生

※1 サンフランシスコ空港での水販売:セキュリティゲートでは空のプラスチックボトルであれば持込可能であり、執筆中の今、飲んでいるのはまさにそこで汲んだ水。普通に美味しくいただきました。ただしこれができるのも安心安全な水を提供できる施設に限られるかもしれません。BUSINESS INSIDER 8.23.2019:「ペットボトル入り飲料水の販売禁止-サンフランシスコ国際空港で」にわかりやすくまとめられていますのでご参照ください。

※2 PACK EXPO 2019:
・開催日時:2019年9月23日(月)〜9月25日(水)
・会場:Las Vegas Convention Center
・主催者:PMMI (Packaging Machinery Manufacturers Institute)
・出展社数:2,000社(東京パックは約700社)
・面積:83,600㎡(東京パックは約25,000m2
・来場者:約30,000人(東京パックは約62,500人:のべ入場者数)

※3 「Sustainability and the Circular Economy」講演者:Fisher, Scott Design Director, Consumer Packaging Division, Berry Global, Blue Clover Studios at Berry Global, Inc.
And Flores, Robert VP of Sustainability at Berry Global, Inc.

※4 「Global Packaging Challenges to Achieve Sustainability」講演者:Pienaar, Pierre President at World Packaging Organisation

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